2012年07月12日

乱れる想い

ちょうど一週間前の 7/5(木)、ナットの喉のリンパ節が大きく腫れていることに気が付きました。一週間単位で様子を観ると聞いているので、心配を抑え込んで、抗がん剤治療が予定されている日曜日を待ちました。
診ていただくと、確かに他のリンパ節も少し腫れが大きくなっているそうです。血液の成分検査には問題はなかったようで、抗がん剤の投与は受けることができました。今回の薬は一番最初に投与していただき、触診上は腫瘍が一気になくなったのと同じもの(の何度目か)だそうです。

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今回もうまく効いて縮退してくれることを祈っていたのですが、残念ながら期待どおりにはいかなかったようです。火曜日になってもシコリは目立ったままで、あの薬も効かなくなってしまったのだろうかと考えると、気が気でなくなりました。
その憂慮をナットに気取られないよう努力してはいるのですが...

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もっとも、腫瘍の増大以外に目立った症状は見られません。一つ前の2週間空ける強い薬は(最初の時もそうでしたが)便が緩くなるといった変化が認められたのですが、今回の投与の後は、便や尿の状態も良好ですし、吐き気や倦怠感という副作用もあまり感じられません。
ファルコがシコリを噛んでしまうと困るので、バトルの途中で割って入らなきゃいけないのですが、ファルと激しく遊びたがる程度には元気。本犬は体調の悪化をあまり感じてはいないように見える点は救いです。

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そんな状況下の今日、ARKさんから電話がかかってきました。
ナットの元の飼い主さんかもしれない方から連絡があったそうです。その方曰く、上あごの奥歯が一本無い(生えてこなかった)とのことなので、確認して欲しいという内容でした。
預かり始めた際にざっと自分でも確認したつもりだったので、ナットの歯が足りないことはないと思えました。が、恥ずかしい話なんですが、私はナット(ファルコも)の歯磨きをしていないので、隅々まで確認できていないという自覚もあります。
同時に、その子の年齢は(ナットに対する何人もの獣医師の見立てよりもずっと)若いらしいという話も伺いました。

その方の元飼い犬とナットはきっと別だろうと思いながらも、気もそぞろになって、仕事を早めに切り上げて退社しました。
帰宅してすぐにナットの口をチェックします。右側、犬歯と大きな臼歯との間に小さな歯が 3本。その奥も歯抜けになったところはなさそうです。
続いて左側の唇をめくって覗き込んだ瞬間、息を呑みました。犬歯と大きな臼歯との間、第3前臼歯の部分には空間が空いています。

ナットの元のご家族が見つかったのです。

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dog actuallyに掲載されたこの記事を読んで感銘を受けていたこともあり、私は離れ離れになってしまった被災者と被災犬が再会できるお手伝いをしたいと思ってナットを預かり始めました。正確には、最初は ARKさんに既に居る子の里親になって、被災犬のためのスペースを空けようと考えたわけですが。
ARKさんから(通常の規定で)一時預かり期間は 3ヶ月だと聞いた際にも、少なくとも半年、1年くらいはご家族が見つかるのを待ちたいと申し出たことを思い出します。

が、被災地域が広範囲で情報が避難所に行き渡りにくい事情を考慮して、ARKさんが 6ヶ月に延長された一時預かりの期限がきた時には、私の気持ちは少し違う形に固まっていました。"Made for Each Other"の本文やコメント欄で書いたように、"迷いなく"ウチの子として一生付き合っていきたいと考えるようになっていたのです。

元のご家族が無事でいらっしゃったことは、もちろん嬉しいことです。
本来なら、すぐにでも再会させてやりたいとも思います。そして、元のご家族に、ナットはこんなに元気に暮らしていますと伝えたい...
が、現実にはナットはリンパ腫を患ってしまっています。病気の進行を考えると、いろんな想いが錯綜して、心の整理が付きません。

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まだ詳しい話を聞けてはいないのですが、その方はナットがご自身の犬であれば、会いたいとおっしゃっているそうです。
そりゃそうですよね。私が同じ立場で愛犬が生きていたとわかったら、何を置いても飛んでいきたいと切望するはずです。なので、その方に対してはぜひ会っていただきたいと思っています。

ですが、情緒不安定な要素が残る(まだ車に対して執心することもある)ナットが元のご家族に再会した後にどんな精神状態になるか、そしてそのことが病気と闘う際の足かせにならないかという点については不安を感じるのです。

ナットが元のご家族を選ぶようなら、福島に戻る方が幸せかもしれないという思いもよぎります。が、その方はまだ仮設住まいとのことですし、その地域にきちんとした医療機関があるかどうかもわかりません。
私自身はナットにできるだけ最良の治療を施してやりたいと考えていますし、実践もしているつもりです。命の長さを考えれば、おそらく"ウチの子"で居続けた方が良いように思います。
しかしながら、我が家は平日は留守番をさせているわけですから、症状が進んだ時のことを考えると、愛する人がいつも側に居てくれる環境を作られるのなら、そちらの方がナットは幸せなんじゃないかとも思うのです。

こうやって駄文を書いていれば、少しは気持ちの整理が付くかと思ったのですが... ダメですね。
元のご家族の情報がほとんどない状況で、あれこれ考えても仕方ないとわかっているつもりなのに、心がざわざわして落ち着けないのです。
posted by Tosh at 23:59| Comment(11) | ワンズ日記
この記事へのコメント
こんにちは
Toshさんの戸惑いがとてもよく伝わってきました。
もし私がToshさんの立場だったら、ナットくんを抱きしめて涙がとまらないかもしれません。でも、ここはToshさんのことですから、元のご家族様の情報等を合わせて、ナット君のための最良の結論をだされることと思います。
遠いマーク地方からではありますが、応援?(見守り?)させていただきたいと思っています。
(あまり好きな言葉ではありませんが)Toshさん、がんばってください!
Posted by マーク母 at 2012年07月13日 14:37
マーク母さん、
応援、ありがとうございます。
もともとは、元飼い主さんが見つかることをずっと願っていたはずなのに、なぜか複雑な想いで、素直に喜べない自分自身にも戸惑っております。
ナットの発病がわかった時でさえ、こんなにうろたえることはなかったのに...
焦ることなく、自身の感情に流されることなく、ナットの幸せを目指したいと思います。
ありがとうございました。
Posted by Tosh at 2012年07月13日 18:20
パパさんの複雑なお気持ちが痛いほど判ります。病を持った我が子に何が最善で何が自分にしてあげられるのか…。(こちらもゆうのことではご心配お掛けしてます。。)
震災後まもなくにお会いしたとき、被災地に対して何もできないと考えた私は、気持ちばかりですが、まとまった額の義援金をしたことをお話したら、「僕はそのような形では被災地に支援できないないなぁ(したくないなぁだったかも)」とはっきり仰いました。その時にはどのようなことを考えておられるのか、察しもつきませんでしたが、被災犬のことを当初から気に留めていらしたのですね。
ナットくんを迎え入れられるまでと迎え入れられてからの諸問題も、いつもワンズ目線で一貫した愛情でもって接されるパパさんをずっと尊敬してきましたし、これからも変わりません。ここまで出来る方はそうそういませんもの! 
これから先のこと、私の気持ちをここで言うことは控えますが、パパさんの思いは必ず相手方さまに伝わるはずです。ご自身の感情も時には優先度を上げてください。パパさんが後悔しない、そして納得のゆく結論を出されること、それが私の望みです。
Posted by ゆうあい母 at 2012年07月15日 06:54
ゆうあい母さん、
ゆうちゃんが大変な時なのに、お気遣いに満ちたコメントをありがとうございます。
ちょっとほめ殺し(あるいは買いかぶり)的でこそばゆくもなりますが、お気持ちはしっかり受け止めさせていただきました。本当にうれしく思っています。

被災地の支援に関して、義捐金を否定したつもりはなかったのですよ。私も少ないながらおこなっていますし。
阪神大震災の時も何もできなかったという想いと、今回は地震が襲った時に日本に居なかったという後ろめたさも手伝って、あの頃は、すぐにでも東北に駆けつけたいという気持ちがありました。
それが叶わないとしても、安全圏に居て単に経済的な支援をするだけで良いのだろうかという疑問があって、何か自分自身の時間や労力を使ってできることはないかと探している状態だったと思います。

なので、もともとの想いとしては、元の飼い主さんが復興を成していかれる際の伴侶として、ナットをお返しするのが筋だとは考えるのです。もしもナットの健康に不安がない状態で、元のご家族が望まれるのなら、その道を選んだのではないかとも思います。
ですが、いろいろ考えた今の私の気持ちは、元のご家族の気持ちをしっかりと受け止めながら、私たちの家族としてこれからもナットと暮らしていきたいというものです。

最後になっちゃいましたが、ゆうちゃんが平穏な時間を取り戻して、楽しい思い出をこれからも積み重ねられることを、心から祈っています。
供血等でお役に立てることがあれば、いつでもご連絡くださいね。
Posted by Tosh at 2012年07月15日 16:38
人間社会で共に暮らして行く以上、その行動のイニシアティブは人間が取らなければなりません。
それは食餌しかり病気の治療方針しかりです。
そして、イヌの”拠り所”についても同じでしょう。
とーちゃんさんの頭の中には今までの経緯、とーちゃんさんのイヌに対する想いで一杯のことと思います。
ですが、判断の大部分はとーちゃんさんに委ねられてる訳ですから(言葉は悪いですが)ドライな思考は必要なのではないかと思います。
愛する我が家のナットではなく、いちGRの若武者の将来コトだけを考えるのは難しい事ではありますが。
ナットに関わるみんなに幸あらんことを祈ってます。
Posted by ラフ父 at 2012年07月15日 22:46
ラフ父さん、
右に左に気持ちの揺れる私を、時に強い口調で諭していただけることを、いつもありがたく思っています。
ナットとはこれからもウチの子として一緒に暮らしていきたいと自身の結論を出して、元のご家族にそうお願いしたいということを、今日 ARKさんにお伝えしたところです。

これからも、どうぞ忌憚ない意見を聞かせてくださいね。
ありがとうございました。
Posted by Tosh at 2012年07月15日 23:18
Toshさん、お久しぶりです。
リリィが亡くなってから何度かコメント書こうかと思ったのですが、”リリィのかーちゃん”という名前を書こうとして躊躇して書けなくなってしまっていました。
ナットくんのこと、複雑な思いお察しします。
こんなことを私が言うのはおこがましいのですが
一人で考えていても、たぶん何が一番よい選択なのかはわからないと思います。
抗がん治療については、おそらく今のドクターが最良でしょう。
でも、何がナットの幸せなのかを、これからのナットくんの生活を(どこで、だれと、どんな風に暮らすのか)、元飼い主さん、Toshさんご夫妻、そしてナットくんを含めて一緒に考えてみてはどうでしょうか?
ナットくんが”ぼくこうする”と決めてくれれば一番良いのですがねぇ(笑)
まずは電話でも良いと思います。
元飼い主さんの状況や気持ちなどもお聞きし、又こちらの状況もお伝えして話をされてみてはいかがでしょうか?
Toshさんのナットくんに対しての気持ちはたぶん、元飼い主さんに負けないと思います。
お話をしてからナットくんとの面会も考えて見られたらよいのでは?
少し怖いけど、迷うのであれば私的には元飼い主さんとナットくんを会わせて様子を見ることもやはり大切なのではと思います。
もちろんナットくんに精神的な負担がかかることを避けたいという気持ちもわかりますが・・・
もちろん、会わない、会わさないという選択肢も、又そうする権利もあるのではと思います。
ただそれを選ぶほど、その選択に強い確信を持てればよいのですが・・先々やはり会わせてあげればよかったのではという後悔をしないか・・・?

ある番組で犬の気持ちが読めるという女性が寝たきりの残りわずかの状態になった犬の気持ちを語っているのを見たことがあります。
その犬は事故に遭い死にかけているところを現飼い主さんに保護され半身不随の状態で、長い年月献身的に家族として飼われてきました。
たぶん、放浪前よりも長い年月(7年とか10年とか)だったと思います。すごく愛されて大切にされているようでした。
でもその女性が語ったその子から受けるイメージはその子が幼い頃、違う人と元気に楽しく駆け回っているイメージ、輝いている場所のシーンでした。
その女性を信じるかどうかは別として、それを見た時私はちょっとショックでした。
そしてリリィは亡くなる時、彼女の犬生の中で一番楽しかった思い出としていつをイメージするのだろうと考えたりしました。
実は彼女のタバコを吸う男の人に対する強い愛着は彼女の中で別離したある人をイメージしているように私はいつも感じていたからです。

Toshさんが自分で結論を出すためにはいつもされている様にいろんな情報を集めていく必要がありますよね。
もしかしたら少しの情報で結論を簡単に出せるかもしれないし(ex.元飼い主さんが中途半端な気持ちだったり)
Toshさんは相手に会って話をしても、感情に流されるタイプではないですし、一人で考えているだけではやっぱり先に進みにくいのでは?
みんなが自己満足ではなく”ナットくんの幸せ”に軸を合わせて一緒に話し合い、考えた上でお互い納得・了解しあった結論を導き出して良い関係が作れることを、そしてなによりナットくんが幸せに過ごせることを願っています。
Posted by リリィのかーちゃんforever at 2012年07月15日 23:42
今新しいコメント見ました。
結論を出されたようで、良かったです。
迷わす様なコメントを書いてしまい失礼しました。
早い決断ができて良かったと思います。
ナット君の治療にも毎日の生活も今まで通り
みんなで楽しくお過ごし下さい!
Posted by リリィのかーちゃん at 2012年07月15日 23:50
リリィのかーちゃん(forever)さん、
長い時間をかけてのアドバイス、ありがとうございました。行き違いになっちゃって申し訳ない部分もあるかもしれませんが、こうやって心配していただけること自体が私たち家族の力になっていますし、書いていただいた内容にはこれからどう考えるかの指針も感じていますよ。

私はアニマルコミュニケーションについては懐疑的なので、その番組で語られたイメージについては(リリィのかーちゃんさんも)気にするべきではないと考えます。もちろん、アニマルコミュニケーターという方々の中には、トレーナーさんと同じように、我々なんかよりもはるかに優れた観察力をお持ちの方が多いのだろうとは思いますが。
が、犬にせよ人間にせよ、楽しかった一番の思い出を抱いて旅立ってくれたら良いなと思いますし、ウチの子達にとっては、我が家での暮らしがそうであって欲しいと願っています。

それと、今日 ARKさんに伝えたことがもう一つあります。元のご家族に"ぜひ一度ナットに会ってやって欲しい"ということです。
もしかしたらナットが動揺することになるかもしれませんが、それは私たちがフォローして乗り越えさせてやれることだと信じています。
ナットは私やかーちゃんのことを大好きで信頼しているはずですから!
Posted by Tosh at 2012年07月16日 00:29
昨日の僕のコメント.........
ナット君の家族として、そして僕なんかよりもずっとイヌと人間の関わり方について深く考えておられるとーちゃんさんに釈迦に説法どころか失礼なコメントでした。
リリィのかーちゃん様のおっしゃる通りですよね。
僕には文章力が少々足らないのかもしれません。
それに、僕自身が優柔不断なのかもしれませんねぇ....。
ナット君が楽しい時間を過ごせますように。
Posted by ラフ父 at 2012年07月16日 09:29
ラフ父さん、
返事がめちゃ遅れてしまってごめんなさい。昨日は朝から遠出をしていて、帰ったらバタンQ(死語Xp)だったものですから。

で、どこが"失礼"だったのかわかりません。ホントです。
私は優柔不断においては人後に落ちないタイプですし、こんなに皆さんに心配をかけてしまうような書き方をするべきじゃなかった(もう少し自分の中で結論を出してから記事にすべきだった)んじゃないかと反省もしているところなんですよ。
でも、いろんな方からご意見をいただいて、自分の心の整理がついたのも事実。
時に、言いにくい苦言も呈してくださるラフ父さんにはいつも感謝しているんですよ。
これからも、同じスタンスで見守っていただければ嬉しく思います。
Posted by Tosh at 2012年07月17日 11:34
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