2013年06月15日

Wolf in the Parlor

先週末の日曜日、ペニーは 4ヶ月齢になりました。
体重は 17.1Kg。同じ頃のファルが 14Kgくらいだったので、やっぱりかなりデカイですね。ちなみに今日の体重は 18.0Kgでした。

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ところで、今年の梅雨入りってのは何だったんでしょうね... 全くと言っていいほど降らなかったので、メインガーデン側には、葉が黄色くなった木が出てきました。なので、水曜日からは慌てて水やりを始めたんですよ。
樹の花は少し減って、バラ以外で目立っているのはスモークツリーくらいになっています。写真の黄色はニセアカシアです。

実は、この記事を書き始めて日が経っちゃったので、ちょっと違和感のある近況報告?になってしまいました。今日は久しぶりのまとまった雨で、しばらくは水やりをせずにすみそうです。

さて、今回は犬本ネタ。久しぶりに新刊のものを読みました。

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ピューリッツァー賞を既に二度受賞しているジョン・フランクリン氏による "子犬に脳を盗まれた! -不思議な共生関係の謎-"です。

2009年にアメリカで出版された際のタイトルは、"The Wolf in the Parlor: - The Eternal Connection Between Humans and Dogs -"。が、翌年にペーパーバック版が出された時には、副題の方が "How the Dog Came to Share Your Brain"に変更になったようです。
犬と人の共進化に強い興味を持っている私としては、抗いがたい匂いを感じたもので、発売前に amazonさんに予約注文をしてありました。

この本の内容は、サイエンスライターであった著者が、1970年代半ばに出会った一枚の写真、そして 1980年代後半に結婚を機に一緒に暮らし始めたチャーリーという犬との生活を通して、犬と人間の関係に思いを巡らせる思索の旅の物語です。

一枚の写真というのは、アイン・マラッハ遺跡で老人が子犬と一緒に埋葬されていたというもの。dog actuallyのこの記事の 3枚目(モノクロ写真)と同じ物のはずです。
史嶋桂さんの文章では、"1万4千年前"(とか"老女")という記述が見られますが、これは彼の間違いだと思われます。先苅貝塚の年代も一般的に言われている年代とは異なっていますし...

もう一つ、思索の核心となる疑問は、人類が世界を治めるようになった時に脳が約10%減少したという事実。著者は脳科学や人類学に関わってきたサイエンスライターなので、いろんな分野の科学トピックを織り交ぜながら、この"謎"に迫っていくという、いわば科学ミステリーの側面も持っています。

記者は探偵によく似ている。小さい謎を解いていきながら、いつかはそれが一つにつながって大きい謎が解決できると信じている。
(ジョン・フランクリン著「子犬に脳を盗まれた! −不思議な共生関係の謎」 p.62より引用)

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<今回の挿絵は今週の前半に撮った写真です>

読み物としては、とってもおもしろいです!
賞を取ってこられた方だけあって、それぞれの話題の取り上げ方、伏線の張り方など、読者をグイグイと"犬とは そして人間とは何者なのか?"というテーマに引きずり込んでいく文章力と構成には脱帽です。科学者ではないジャーナリストの真骨頂と言うべきでしょうか。

が、わくわくしながら読み進めていくと、私のような"犬と人の共進化オタク"にはちょっと物足りない感じもしてきました。
少し情報が古い(主に1990年代に考察されていたようなので、いたし方のない側面もありますが)のと、数字や推論の根拠の扱いが大雑把な感じが否めないのです。"共進化"ネタの新刊ということで期待が大き過ぎたのかもしれませんが、ほとんど新しい知見は出てきません。それに、(私の予備知識が多過ぎるのかもしれませんが)なかなか核心部に到達しない"引っ張り過ぎ"を感じたのです。

狼から犬への進化のタイミングを 12000年前というある瞬間に求めるところなどは、(本文中でも書かれていますが)レイモンド・コピンジャー氏の考えに寄り過ぎていると思われ、"随行狼"(原文では"follower wolf")という単語が頻繁に出てくるようになると、少し期待し過ぎたようだと醒めた気持ちも芽生え始めました。
私はコピンジャー氏の著作を読んだことはありません。が、NHKで放送された"イヌはこうして進化した"(オリジナルは"Dogs That Changed the World")の中で、ベリャーエフのキツネの実験に関する解説が荒っぽく、"ダーウィンは間違っていた"と発言されるに至っては、乱暴な考えの(科学者らしからぬ)方だと思っています。
"Man Meets Dog"の記事で紹介したマーク・デア氏や Wolfgang Schleidt氏の"随行猿?"についての考察が出てくるかと期待しちゃってたんですが...


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ところが、最後の二つの章で、私のこの本に関する評価はグンと復活することになりました。

狼が犬になったとき、脳の質量が二十パーセント減少した。そうなったのは人間の影響だと考えるのは至極当然だった。ならば僕らはなぜ、人間の脳の質量が減少したのを犬との近しい関係のためだとすぐに認めなかったのか。自然の公平さを理解するのがなぜそれほど難しかったのだろう? 犬に作用した力が同時に人間に作用しないわけはない。
(ジョン・フランクリン著「子犬に脳を盗まれた! −不思議な共生関係の謎」 p.304より引用)

最後まで残されたこの"謎"に関しては、"Not a Coincidence"の中で紹介した Colin Groves氏の見解のように、"嗅覚等のセンサー機能を犬に転嫁できた"というよく聞く説が述べられるとばかり思っていました。
ところが、フランクリン氏は私の予想を裏切って、もっとずっと素敵な"推測"を用意してくださっていたのです! 私はその"推測"が正しいだろうと感じています。
どんな説かを書きたい気持ちで一杯なのですが、これから読まれる方の楽しみを奪うわけにはいきませんね。グッと我慢することにしましょう。

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僕はまたあの日を思い出した。もうずいぶん前のことになってしまったが、狼がうちの居間に初めてやってきた日のことだ。(...略...)
ボクはここで暮らすよ、とチャーリーは言った。きみは早く慣れるしかないよ。それがみんなにとってしあわせなことなんだ。
そのとおりだとわかるまでに、僕はどれだけうんうんいって頭をしぼらなければならなかったことか。

(ジョン・フランクリン著「子犬に脳を盗まれた! −不思議な共生関係の謎」 p.307より引用)

謎が解けた後で、第1章でも書かれていたチャーリーの"無言の言葉"が再掲されています。
日本語訳を読んでいるだけでは、何が"そのとおり"なのかちょっとわかり辛いですね。で、原文を調べてみました。

I am here to stay, he said, and the sooner you get used to that, the better it will be for everyone.

なるほどシャレていますね! 冒頭部では日本語訳の通りに思える文ですが、"ボクは(人間との暮らしに)溶け込んだ存在なんだよ"というような意味を重ねてあったようです。また、おそらくは、早く慣れた方が良いという相手は"きみたち(人間全体)"に変化しているのでしょう。

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<ウチの居間にいる"狼"たち>

いろいろ荒っぽい(ご存知のはずの知識を公平に書かれていない)感じもするので、科学の啓蒙書としてはお奨めしにくい面もありますが、犬と人の関係に思いを馳せる方なら、きっと感動を覚えるような"推測"が待っていますよ!
実のところ、私の中では、今年になって読んだ犬本の No.2になりました。
# イチオシの首席は "マールのドア" です。為念。
posted by Tosh at 23:59| Comment(2) | 雑記帳
この記事へのコメント
ファルコパパ ご無沙汰です。
『子犬に脳を盗まれた!』おもしろそうじゃないですか。さっそくamazonします。
ファルコパパの画像 いつ見てみても美しい!
Posted by こころ父 at 2013年06月17日 10:38
こころ父さん、
ごぶさたしています。
ブログで、きっちりと練習を積んでおられるのを拝見していますよ。 # 中越里山って良いフィールドですねぇ!

記事中ではネガティブなことも書いちゃいましたが、"子犬に脳を盗まれた!"は良い本だと思います。原版の副題は"何のこと?"って感じでしょうが、読んでみると"なるほど!"と感じ入られるかもしれません。犬と人の関係に魅力的な光を当ててくれる素敵な書籍です。ぜひ、お楽しみあれ!

私の写真は、本当にスナップなので、お恥ずかしいです。ワンズもへらへら笑っているようなのばっかりですし...
フィールドでのこころちゃんの写真の方が、凛々しさがあってずっと素晴らしいですよ!
Posted by Tosh at 2013年06月17日 23:13
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